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  • 執筆者の写真Toshiko Kamada

観音さま


”この世の全ての人の涙を吸い取ってあげている。”


高校の国語の副読本に載っていた、観世音菩薩像の写真。

2cm角ほどのその白黒の写真に、授業中ずっと見入っていた。

どこの仏像だったのだろう。木像だったと思う。


観世音菩薩の説明書きがあったのか、先生が説明してくれたのか、

とにかく、

”この世の全ての人の涙を吸い取ってあげている観音さま”

という強烈なイメージがその時から私の中にある。

そんなすごいことをしてあげているのに、こんなに穏やかな美しい顔立ちなんだ〜と、

素直に感嘆し、こんなになれたらいいなあ〜とそう本当に思った。

40年経つ今でも、私の中の観音さまはずっとその人だ。私の憧れの人。


のちに観世音菩薩についての説明を読んだりしても、どういう存在を表わしているのか結局よくわからないが、

どうも、人を苦しみや悲しみから救うという誓いを持っている存在らしい、という説明で、自分を納得させている。


私は特定の宗教を信じてはいないが、宗教がやろうとしてきたことの中には、とても興味深いことが色々とある。

本来の目的が何であったにしろ、私は仏像をみると、私たちの中にあるこういう存在を感じることができるように思う。

そのために仏像が存在していると思うと一番しっくりくるので、そう思うことにしている。


国語の副読本に載っていた小さな写真は、自分が「さあ、ここでどうする?」と悩む場面で、ふと浮かんできては、何度も私を導いてくれたように感じている。


でも、後で、どうしてあの時、”この世の全ての人の涙を吸い取ってあげている観音さま”の方向を選ばなかったんだろう?と思うことも、もちろんたくさんある。


結局、選んでいるのは私なんだけど。


それでもいい。憧れの存在を持つことは、いくつになってもやる気の元だから。

数え切れないほどの生をかけてでも、こんな風になれたらいいな。

”この世の全ての人の涙を吸い取ってあげている観音さま”

私の心の壁に貼ってあるブロマイド。

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